Handmade Soul

2014.05.14 Release!! 

 

01. 終わりのないリズム

  FM NORTH WAVE 5月度「MEGA PLAY」

  RADIO BERRY 5月度「B-HOT!」

  ふくしまFM 5月度前半「Prime Music★」

  FM長野 5月度「POWER PLAY」

  FM PORT 5月度「POWER PLAY」

  Kiss FM KOBE 5月度「HOTRAXX」

  FM-NIIGATA 5月度「POWER PLAY」

  エフエム岩手 5月度「REPUTATION CUT’S」

  エフエム青森 5月度「MONTHLY ON AIR」

  FMY 5月度「Morning Street」マンスリー・ピックアップ

  エフエム鹿児島 5月度「μ’s UP!」エンディングテーマ

  ラヂオもりおか 5月度「POWER PLAY」

02. IN THE SUN

03. MUSHI MUSHI ME

04. シンパシーテレパシー

05. 好きなキス

  TBS系全国ネット「新チューボーですよ!」7月~9月度エンディングテーマ

06. ‘Round Midnight

07. Baby Bop (Interlude)

08. Willow weep for me

09. あなたがほしくなる

10. CHILLS…

11. ぼくの夢を見ておくれ

12. 春夏秋冬 (Handmade Soul ver.)

13. Goodbye 2 Yesterday [iTunesのみ限定ボーナス・トラック収録]

14. Bridge Over Troubled Water

 

2014.5.14 In Stores

iTunes 2014.4.30予約&先行曲配信開始

Pirates Records / PRPL-0001

¥2,400 (tax in) / ¥2,222 (tax out)

 

“IN THE SUN” iTunesジャズ・トップソング1位(2Week)獲得!!

圧倒的なグルーヴで渾然一体となり奏でられる『Hanah Spring』名義として初となるアルバムが満を持してリリース!!

King Of Diggin’ことMUROが楽曲プロデュースに、Michael Jacksonの”I Wanna Be Where You Are”を手がけた

Leon Wareが作詞・作曲(書き下ろし楽曲)で参加!!

名門Blue Noteレーベル初の日本人契約アーティストTakuya

Kurodaを始め、ニューアルバムが好評のKan Sano、Satoshi Yoshida等、敏腕ミュージシャン達が一同に介し制作さ

れたこだわりの一枚が遂にリリース!!

 

Liner notes

同世代ミュージシャンと作り上げた本格的日本産「ホーム・グロウン・ソウル」

 

ホーム・グロウン・ソウル。

かつて1970年代にイギリスで「ホーム・グロウン・ソウル」という言葉が使われるようになった。主にイギリスのアーティストがアメリカのブラックのソウル・ミュージックに憧れイギリス産のソウル・ミュージックを作り出すようになったその現象を示した言葉だ。

たとえば、イギリスでアメリカのソウル・ミュージックを好んでコピーしたアーティストといえばローリング・ストーンズやビートルズが有名だ。彼らもある種のブルー・アイド・ソウルと言えば言えるのだが、1970年代に入っての「ホーム・グロウン・ソウル」はアヴェレージ・ホワイト・バンドやジミー・ジェームス&ザ・ヴァガボンズ、カール・ダグラス、ティナ・チャールズ、ザ・リアル・シング、80年代になりリサ・スタンスフィールド、ソウル・トゥ・ソウルなどがそれにあたる。さらに最近ではインコグニートやブラン・ニュー・ヘヴィーズなどもイギリスの地元産(ホーム・グロウン)ソウルだ。

イギリス人がアメリカのソウル・ミュージックを見る距離感は、ある意味で日本人ミュージシャンがそれを見る距離感と似ている。今、若手日本人ミュージシャンたちでアメリカのソウル、ブラック・ミュージック、R&B的なサウンドを研究し、同様のサウンドを追及しつつ、それが徐々に成功してきている様子はかつてのイギリスにおける「ホーム・グロウン・ソウル」の動き、現象と似たものを感じる。そして、このハナ・スプリングのプロジェクトはまさにそんな日本における「ホーム・グロウン・ソウル」の息吹が感じられる典型例だ。

英語の歌を目をつぶって聴いていれば、まるでアメリカのソウル、R&Bシンガーのようにさえ思えてくる。曲によってはいわゆる「ネオ・ソウル」的な味わいさえ感じられる。

 

リオン・ウェア。

しかも今回のアルバムには、錚々たるメンバーが集っている。何よりも、2曲でオリジナル楽曲を提供してくれているリオン・ウェアの存在は大きい。リオンといえば、マイケル・ジャクソンの「アイ・ウォナ・ビー・ホエア・ユー・アー」、マーヴィン・ゲイの「アイ・ウォント・ユー」、そして、ミニー・リパートンの「インサイド・マイ・ラヴ」などを書き、プロデュースしているアメリカ・ソウル・ミュージック界の大御所だ。セクシーな曲を書かせたら右に出るものはいないリオンの楽曲提供は、ソウル・ミュージック愛好家にとってこれ以上のステータスはない。

さらにアメリカ・ブルーノートと契約した在ニューヨークのトランペット奏者、黒田卓也、新感覚のキーボード奏者、カン・サノ、そして長くニューヨークにいて黒人のグルーヴを体で知っているドラマー、フユ、同じくニューヨークで活動しジョン・レジェンドなどのバックをつけたこともあるベース奏者、ソクサイらがコンテンポラリーなR&Bサウンドを紡ぎだす。アメリカでリリースされてもそのままR&Bステーションでプレイされそうなサウンドに仕上がっている。

まさに今の日本のR&B、ソウル・シーンの最前線を走るメンバーが一堂に会し、本場アメリカの息吹を入れ込み作り上げた一作と言える。

 

経験。

ハナ・スプリング(1983年6月26日生まれ。5人兄弟の2番目)は父がジャズ・ギタリスト、母がジャズ・シンガーということで、生まれたときからジャズに囲まれ育った。高校卒業後、アメリカに短期留学をし、2001年ごろからシンガーとして活動。来日するR&Bアーティスト、ジョーやブライアン・マクナイト、エリカ・バドゥー、ボーイズ・トゥ・メンのワンヤのソロ・ライヴなどのオープニング・アクトを務め、注目されるようになる。古くからのソウル・ファンにはこのころからハナの存在を知っている者も少なくない。

2004年2月、ユニヴァーサルから出た『エヴリシング〜ミーシャ・リスペクト・アルバム〜』で1曲「つつみ込むように…」を英語でカヴァー。これをミーシャ本人が気に入り、彼女のバック・コーラスに抜擢された。これと並行してインディーのオリガミ・プロダクションのメンバーたちと2008年1枚アルバムを作った後、2009年8月、ユニヴァーサルからハナとしてメジャー・デビューした。

ユニヴァーサル時代には2009年4月から1年半東京のFM局Jウェイヴでレギュラー番組を持ち、毎週1曲を「ハナウタ・コーナー」としてオリジナルやカヴァーなど弾き語りをして70曲ほど番組ライヴで歌った。その頃歌ったカヴァーに、カーティス・メイフィールド作品やミニー・リパートンの「インサイド・マイ・ラヴ」(リオン・ウェア作)などがあった。しかし、そのアルバムは思ったほど売れず、3年ほどでユニヴァーサルから離れ、以後は自由に自分の音楽活動を展開するようになった。

「ハナウタ」でも歌った「インサイド・マイ・ラヴ」は、姉が持っていたミニーのベスト・アルバムに入っていて、ハナ・スプリングがどの曲よりも生涯で一番好きな曲だと告白する。そして、2012年8月、友人に連れられて東京ブルーノートにインコグニートのライヴを見に行き、そのゲスト・ヴォーカルとしてステージに立っていたリオン・ウェアに面会することになる。

 

出会い。

ハナは振り返る。「もう、(リオン)本人に会えるとは思っていなかったので実際楽屋で会えたときには天にも昇る気持ちでした。それに『インサイド・マイ・ラヴ』がどの曲よりも一番好きなんで、超緊張しました」そして、自分がシンガーであること、いつか曲を書いて欲しいということを告げるとリオンは「ちょっと歌ってみてくれ」と言った。ハナは緊張しながらも「インサイド・マイ・ラヴ」をその場でアカペラで歌った。リオンはそれを微笑みながら見ていた。

ちょうど僕もそのとき楽屋にいてその様子を目撃していた。

そして、驚くことなかれ、それから1ヶ月もしないうちになんとリオンから彼女の元に音が送られてきたのだ。そこには「チルズ」と「イン・ザ・サン」がリオンの打ち込みと思われるトラックと仮歌で収録されていた。

そのときの彼女の面会後に、リオンから別の場所で「ハナというシンガー、どう思う」と聞かれ、「she’s really good, she’s nice」と答えたような記憶があるのだが、まさかそのときはリオンがハナに曲を本当に贈ってくるなどということは想像だにしなかった。だからその後、ハナからリオンから曲をもらいました、と言われたときには本当に驚いた。

ちょうどその頃からすでに次のアルバムは自分が同世代のミュージシャン仲間たちと本当にやりたいことをやりたいようにやって作ろうと考えていたので、すぐにこのトラックをアレンジして録音しようと考えた。

最初聞いたとき、「ミニー・リパートンが歌いそうな曲だな」と思ったというこの曲をカン・サノと吉田サトシが今風R&Bサウンドにアレンジした。楽曲のキーもハナにどんぴしゃだった。

アルバムの全体的なプロデュースをてがけた吉田サトシは、東京生まれ札幌育ち、ニューヨークで修行を積んだジャズ系の新進気鋭ギタリスト、プロデューサーだ。カン・サノは金沢出身こちらも新進気鋭の東京在住のピアニスト。いずれも、ハナと同世代の同士だ。

「イン・ザ・サン」は当初からアルバムのトップ1曲目にいれようと思っていたが、レコーディングの最後から2番目に「終わりのないリズム」が出来て、これを1曲目にすることにして、「イン・ザ・サン」は2曲目になった。

アルバムにはニューヨークで活躍するトランペット奏者、黒田卓也も参加。ハナはニューヨークを訪れ、黒田とともに曲作りもしていたが、ちょうどハリケーン・サンディー(2012年10月22日~31日)が来ていたときでいろいろと大変だったという。

 

同世代。

今度のこの新作を括るとすればハナ・スプリングはこれを「R&B/ジャズ」と語る。さらに、何より同世代の音楽仲間たちと一緒に自分のやりたいこと、音楽的方向性を徹底的にディスカッションして決め、やりたいように作り上げたことに多いに喜びを感じている、と言う。ここに参加した同世代のミュージシャンたちは、ファンクやグルーヴ、ソウル、ジャズ、ときにヒップホップも聴くという仲間でハナとも音楽的方向性がひじょうに似ていた。ひとつの音楽イメージを全員で共有できたことはひじょうに大きいと思う。

 

手作り。

アルバム・タイトルの『ハンドメイド・ソウル』について。

「もともと『ソウル』という言葉を使いたかったんです。インディーズで出した最初のアルバムも『ソウル・フラワー』というタイトルだったんです。ソウル+ハナでこれも気に入っていたんで、『ソウル・フラワー2』でもいいかなと思ったんですが、再デビューでもあるので違うのにしようと。それで今回はゼロからすべて自分たちで完成までやらせてもらったので、自分の手で作ってます、以前みたいに誰にもやらされていないです、という意味を込めて『ハンドメイド』という言葉をいれて『ハンドメイド・ソウル』としました。みんなの手を借りて、私の意志で作りましたということなんです。材料、素材は私が厳選して集めて作りましたから安心してください(笑)という感じです」

今度のこの新作は「R&B/ジャズ」だと彼女は自信をもって断言する。そんなハナ・スプリングの「イン・ザ・サン」や「チルズ」がニューヨークのブラックラジオ局WBLSあたりから流れる日を夢見たい。

 

[April 20, 2014: Yoshioka Masaharu —The Soul Searcher]

“An Early Bird Note”

http://www.soulsearchin.com

吉岡正晴=音楽評論家。ソウル・ミュージックの情報を発信しているウェッブ『ソウル・サーチン』、同名のイヴェント運営。1970年代には六本木「エンバシー」などでDJ。ブラック・ミュージック、ディスコ全般に詳しい。ソウル系のLP・CDライナーノーツは1300枚を越える。著書に『ソウル・サーチン』(2012年7月から電子書籍でリリース)、翻訳本に『マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル』(デイヴィッド・リッツ著)、『マイケル・ジャクソン全記録』など。2013年4月から関東地区のインターFM(76.1mhz)で毎週火曜日夜ソウル・ミュージック専門番組『ソウル・サーチン・レイディオ』の選曲構成DJを担当中。